Writer's View
SORAの事業として、私自身は、2019年大分県産業創造機構『おおいた空飛ぶ産業ネットワーク構築事業』のコーディネーターと、2020年「おおいた宇宙関連産業チャレンジ支援事業」の宇宙産業チャレンジに係るセミナー・イベントの企画・運営の2つに携わっています。
産業を作っていった事例としては、2018年の大分県産業創造機構『衛星情報利活用セミナー・個別相談会』からスタートしています。
日本独自の衛星測位システム「みちびき」の衛星データの活用に関するセミナーを行い、その際に相談を受けたのが、今回ビジネスグランプリを受賞されたニュージャパンマリン九州の山本さんでした。
ボートを港に着岸させるのが非常に難しく事故も多い。またカーナビのようにGPSを使うと何メートルという誤差が生じるため使えないという課題を持っていました。
そこで、みちびきのcm級の誤差しかない位置情報が活用できるのではないかとアドバイスをいたしました。
最初にお話しした時はあまりの精度の高さに山本さんも半信半疑だったようです。
この技術開発ができる機関と山本さんを繋ぎ、開発チームを組んで、2019年に内閣府の実証プロッジェクトに企画提案をいたしました。
実証実験が成功し、今年商品化の予定です。一番の成功事例となっています。
大きなものは2つ進行中です。
1つ目は宇宙と介護です。みちびきの位置・測位情報を利用します。
視覚障がい者向け歩行支援センスウェア開発チームと県内の車いす利用者駆けつけ介助プロジェクト検討チームが連携。今年度本格始動の予定です。
2つ目は宇宙と環境です。公益社団法人 別府湾をきれいにする会からご相談をいただきました。
船で海上に出て別府湾の浮遊ゴミを見つけ、除去をしていましたが、人手不足や人材の高齢化などにより、なんとか効率化したいという要望です。
これは衛星で観測した画像情報と船上で撮影した監視写真からデータを解析して浮遊するゴミを把握することで解決します。
現在は衛星データ解析の専門家と県内の IT企業と組んでサービスにつなげようとしています。
宇宙ビジネス相談会をしているから、何かできるかもしれないと思ってくれた。それが一番大事なんです。こちらも今年から始動する予定です。
このように衛星データを使えば様々な課題を解決する糸口になります。
例えば、観測データは気象だけでなく、土地の傾斜や水分量、日照量なども出すことができます。これらのデータを集めれば、農業や漁業に活かすこともできます。日本の一次産業も海外のようにデータをうまく使い管理し、改革していかなければならないと思っています。
課題を持っている、でも企業価値を高めていきたい。そんな企業を応援したいですね。
衛星データは今までは研究目的が多かったのですが、これからは使いたい企業がどんなデータが欲しいかを明確にし、それに合う衛星を作っていく時代になります。
これからのものづくりは、使う人の気持ちを考えて作っていく必要があります。
昔のように自分たちがいいと思うものを作って営業が頑張って売るという時代ではなくなりました。世の中のニーズに対応して、オンリーワンのものを作るということが大切です。
衛星データは地域ごとに違います。データを活用して地域の課題を解決すれば、それだけ新しい仕事が生まれていきます。自社のサービスをよりよくしたいと思ったときに、衛星データを使ってみようと少し発想を変えてみていただければと思います。
好奇心を持つことが大事です。何かできるんじゃないかと思う心ですね。
だんだんと大分県内の企業も注目し、何か宇宙産業はおもしろいことがありそうだという気運が高まってきていると感じています。
そこで、ここにいけば宇宙の新しい情報があるという場所が必要だと思い、一般社団法人『おおいたスペースフューチャーセンター』を発足、そして交流拠点となる『スペースベースQ』を開設いたします。ここでは企業や学生、一般の方それぞれが課題を持ち寄り、対話することで新たな創造の場になります。ぜひ私たちの発信する情報を活用いただきたいですね。