Writer's View
私は30数年間民間企業で勤務した後、6年間大分県 工業振興課のコーディネーターとして在籍していました。
民間企業では瀬戸大橋の設計施工に関わるなどものづくりに携わっていましたが、県庁ではものづくりをしている中小企業2,500社余りの中から数百社のご支援をさせて頂きました。
2019年4月に立ち上げたおおいたサテライトオフィスでは、それまでの経験を生かしながら、半導体・食品・印刷・自動車・プラントなど様々な業種の企業を支援しています。
SORAは立ち上げから関わっています。最初から関わっているからこそ、現在大分県の宇宙産業の動きがどうなっていて、2、3年後にはどうなるのかの予測が立てられます。
大分県はこの数十年で、大手メーカーの工場ができたことにより、技術・経験をもった企業や人材が蓄積されてきました。
撤退した工場はありますが、この蓄積された企業や人材がうまく活用できると考えていました。
まさに来年から始まる宇宙港は、考えていたことが始まるのではないかと感じています。
宇宙産業というと、宇宙旅行やロケットなど自分に遠い話に思う方が多いかもしれません。
しかし私たちの日常では、衛星データを使った天気予報やカーナビなど、すでに宇宙産業は身近なものになっています。
さまざまな衛星データと、大分県の企業を結びつける。宇宙に携わるビジネスの可能性は無限大です。
私の経験から行政の考えもわかりますし、民間企業の気持ちもわかる。双方の橋渡し役が宇宙産業においても重要な役目であると考えています。
高齢化社会に向けて、宇宙産業と福祉・介護を結びつけたいと考えています。
みちびき(準天頂衛星システム)の衛星データを使えば、cm級で位置情報をとることができます。
一人暮らしの老人や、認知症により徘徊をする老人に信号を発する機器を身につけておきます。
そうするとその信号で導線がわかり、近くの医療機関や施設に信号を送ることができ、見守ることができるシステムがつくれるのではと考えています。
今後、人口減少により介護する人材が少なくなってくることが問題になると思いますが、衛星データをうまく活用すればこういった問題も解消できる糸口になるかもしれません。
また3月下旬に大分市内のこども園で園児に向けたイベントを企画しています。
コーディネーターの高山さんにご協力いただき、宇宙ってなに?惑星ってなに?という話から始まり、自分たちで模型をつくって色を塗り、自分たちだけの惑星をつくってみようという内容です。
昨年はコロナの影響で子供たちの行事がなく、思い出がありません。
きっかけは何か思い出つくりのお手伝いをしたいということでしたが、この企画を通して卒園生である5歳児の思い出が、将来宇宙の仕事がしたいというきっかけになるかもしれない。
子供たちに少しでも興味を持ってもらい、身近に感じてもらうことで、大分の宇宙産業が将来へと続いていくのだと思います。
こういったきっかけ作りも今後私たちの重要な役割であると考えています。
まず必要なのはこのビジネス自体に興味を持つことです。
私は宇宙港(うちゅうこう)の『こう』は港でありながら『口(くち)』であると思っているんです。
宇宙の入り口としてどんどん開拓していかなければならない。止まってしまったら終わりです。
地元の企業が一緒にやる気になっていただかないと道は開けていきません。
口に入るまでの道筋は私たちコーディネーターの役割です。
もちろん、すぐに収益や結果が出るものではないので長期的にみる必要はあります。
しかし、損得なしに飛び込んでみなければ何も始まりません。
経営者の方々には会社がもっている技術や人材が活用できるかもしれないと、少し発想を変えてみていただければと思います。
少しでも興味があればぜひ一緒にやってみましょう。
まずはチャレンジしてみることが大事です。
先ほどお伝えした福祉・介護を例にあげれば、これらは裏方の仕事かもしれない。
でも宇宙と結びつくことによって夢を抱ける仕事になると思います。
次の若い世代に夢を持って語れるテーマの1つとして、宇宙は最適なんじゃないでしょうか?
私が好きな『共創の世界』という言葉があります。
宇宙産業は一人でやれるものではありません。いろんな分野の企業が携わり、共に創造する。
今、大分は他県にない新しい環境ができようとしており、かなりの注目を集めています。
宇宙産業に取り組んでいるということで、企業としてはかなりの宣伝効果が見込めますが、それだけでなく、持っている技術が他の分野から注目されるかもしれません。
そのことにより、宇宙に関することだけでなく、実はいろんな分野に応用できるという可能性があります。
自社の強みがはっきりするようになれば、さらに成長していくと思います。
ぜひ私たちと一緒に宇宙産業にチャレンジしてみましょう。